2014.04.26
シャウムブルガー新聞(ドイツ)に演奏会告知記事が掲載されました
シャウムブルガー新聞(ドイツ)に演奏会告知記事が掲載されました。
〈日本語訳〉
遅咲きの花
〜カタリーナ教会の“若きエリート音楽家たち”シリーズで宮﨑貴子がバッハ、モーツァルト、ガルッピ、クレメンティとマルティネスを弾く〜
インタビューは1つのありふれた質問で始まった。いつ彼女は自分のピアノの才能を確信したのかということを、編集者は知りたかった。宮﨑貴子は遠くを眺め、考えて、答えた。「いいえ、まだです。」そしてけらけらと笑った。良いジョークではないか?
彼女の経歴はそれとは逆のことを物語っている。
4歳からピアノを始めたが、20歳くらいになってようやく職業としてこの道に打ち込むことを決めた。まさに遅咲きの花だ。
2008年10月彼女はドイツにやって来た。彼女の当時の師匠が、ヨーロッパに行って勉強するようこの若い日本人を導いたのだ。そして考えた末ドイツを選んだ。例えばパリなどと比べると“それを無視するにはあまりにも膨大で偉大なドイツ音楽のレパートリー、そして親切な学費事情”がその理由だ。
ハノーファー音楽大学で2010年、2011年とG.ツィッターバルト教授のもとで次々にピアノと古楽器のディプロムを優秀な成績で取得、その間、そしてその後も様々なコンクールに入賞。
明日4月27日の日曜日、彼女はカタリーン教会の“若きエリート音楽家たち”シリーズに招かれフォルテピアノ(昔の楽器~昔の作曲家たちが意図して書き記したであろう、また当時の聴衆が耳にしたであろう音色を再現できる楽器)を演奏する。
「現在古典派の作品をピアノで弾く人たちは、当時それがどういう音色で聴かれていたのか知っておくべきです。」宮﨑貴子は言う。そうすることで当時の響きを今日の楽器のそれに摺り合わせたり置き換えたりする感覚を養うことができる。
このコンサートの司会を務めるペーター・アーペルはこう言い換える。今日我々がベートーヴェンの5番シンフォニーで聴くホルンやフルートの音色は、作曲家が当時聴いていたものとは明らかに違うのです。フォルテピアノは現代の楽器よりもそれぞれのフレーズをはっきりと聴かせられるという大きなメリットがあります。
今日時々忘れられてしまうが、音楽を聴くにはそこに作曲家の手で生み出された作品が存在する。
ムツィオ・クレメンティ、彼はモーツァルトやハイドンにも匹敵するであろう作曲家だ。この才能ある音楽家は1752年ローマに生まれ、早くから個人レッスンを受けた。9歳でオルガニストとなり、3年後に作曲を始めた。
1781年、ヨーゼフ2世がモーツァルトとクレメンティを対決させた話が有名だ。モーツァルトはクレメンティについて否定的なことを書いているが、後に彼のB-dur ソナタop.24-2のメロディーを、自分のオペラ「魔笛」序曲に使用している。そしてまさにその魔笛のテーマのソナタを、宮﨑は演奏する。
話がバッハに移った時、司会者アーペルとピアニスト宮﨑はさらに盛り上がった。バッハとはあのヨハン・セバスティアン・バッハではなく、彼の二番目の息子のことである。アーペルは博識をもって(彼が法律を学んだということを抜きにしても)バッハに忍び寄る。いや、バッハの息子が1768年ハンブルクに来たとき、彼には既に十分な実力があった。モーツァルトもハイドンも彼を絶賛した。彼の音楽と趣味のいいセンスはバロックから前期古典派への指標となった。アーペルは言う、C.P.E.バッハは当時、バロックと古典の両方をその両肩に背負っていた。従来のことは忘れず、新しいものを発展させたのだ。そして忘れてはならないのが、彼は自分のソナタを自分で出版した、最初のフリーミュージシャンだったということである。C.P.E.バッハがいかに偉大であったかを伝える、ある痛々しい逸話が残っている。ハイドンはロンドンからハンブルクへ帰る折、尊敬するC.P.E.バッハを訪問したいと胸を高鳴らせていた。しかし着いてみると、バッハはその年既に亡くなっていたのだった。C.P.E.バッハからは、ソナタA-dur, wq55-4が演奏される。
ハイドンからからは(文字通り)すぐにマリアンナ・フォン・マルティネスにたどり着くことができる。この女性作曲家と若きハイドンは同じアパートメントに住んでおり、彼女は子供の頃彼から日々無料でピアノのレッスンを受けていた。このレッスンの当初から既にマルティネスは素晴らしく達者に演奏したようである。1761年17歳の時、彼女は初めて作曲家として表へ出る。この強い女性の尋常でない人生を書き留めようという伝記作家は一体どこにいるのだ?「彼女は大変聡明でした。」P.アーペルはこう言う。
この女性作曲家からは、ソナタ2番A-durが演奏される。
さらにヴィバルディの時代の作曲家バルダサーレ・ガルッピのソナタc-mollを聴くことができる。この曲からバロック時代は既に明らかに拭い去られ、魅力と優美さに満ちた間違いなく魅惑的な作品だ。
そしてさらに宮﨑はモーツァルト本人の作品“ねぇお母さん聞いて”の主題による12の変奏曲も演奏する。聴いたことがないって?まぁ期待していてください。きっと驚きますから。
チケットは当日会場で12ユーロ、そしてこのコンサートのもうひとつの魅力は、そうペーター・アーペルは締めくくる。アウエタールの歴史、すなわち荘厳な古教会の建物と、入り口の前にそびえ立つすばらしく巨大な菩提樹です。